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こんな見出しがメディアに踊る昨今。将来のある子どもを持つ親としては、かなり気になる問題ですよね...
今後、これまでの暗記型の知識は、あまり重要ではなくなると考えられています。
それに対して、主体的、対話的に学んでいく力や、物事をやり遂げる力など、生きていくうえで重要な資質が、より重視されるようになってきました。
IQよりも価値がある資質を育む
アメリカで行われた「ペリー就学前プロジェクト」と呼ばれる研究調査は、幼児期の早い段階で教育的介入が必要だというエビデンスとして広く知られています。
とくに、IQの上昇などの学習効果よりも、成長後の精神的な健全さや幸福感が高まるなど、内面的な力や資質が育まれることが注目されました。
この内面的な力や資質を「非認知能力」と言います。
んーーまだ概念が難しいですよね...具体的に説明していきましょう!
非認知的能力とは
では、具体的に言うと、”非認知能力”とはどのような教育なのか。
例えば、目標に向かって頑張る力、他の人とうまく関わる力、感情をコントロールする力など指します。
数がわかる、字が書けるなど、IQなどで測れる力を「認知的能力」と呼ぶ一方で、IQなどで測れない内面の力を「非認知的能力」と呼んでいます。
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ノーベル経済学賞を受賞者ジェームズ・ヘックマンの主張
教育経済学の代表的な研究者に、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンさんがいます。
①子どもの教育に国が公共政策としてお金を使うなら、就学前の乳幼児期が効果的
②幼少期に非認知的な能力を身につけておくことが、大人になってからの幸せや経済的な安定につながるということです。
ジェームズ・ヘックマンの代表的な研究「ペリー就学前プロジェクト」
ヘックマンさんの代表的な研究に「ペリー就学前プロジェクト」があります。アメリカのミシガン州で行われている、1960年代からはじまり、現在まで続く調査です。
調査の対象は、経済的に余裕がなく幼児教育を受けることができない貧困世帯の3~4歳の子どもたち123人です。
この中の約半数の子どもに、週3回、1日3時間のプリスクールに2年間通ってもらいました。さらに、週に一度、教師による家庭訪問も行いました。
プリスクールに通ったグループと通わなかったグループ。その後の人生にどんな変化が起こるのか追跡調査をしたところ、40歳の時点で明らかな違いが現れました。
プリスクールに通ったグループは、通わなかったグループに比べて、収入が多い、持ち家率が高い、学歴が高いなどの差が見られたのです。
この結果の理由を「教育を受けてIQが伸びたからではないか?」と考えてしまうかもしれません。
しかし、子どもたちのIQを調べると、プリスクールに通っている間は急激に伸びていますが、9歳ごろになるとIQの差はほとんどなくなります。
ヘックマンさんは、彼らが大人になってもより幸せでいられるのは、プリスクールに通って認知的な能力を伸ばしたからではなく、認知的な能力以外(非認知能力)を身につけたことが大きな要因ではないかと考えたのです。
非認知能力の整理
整理すると以下のようになります。
目標の達成
忍耐力・自己抑制・目標への情熱
他者との協働
社交性・敬意・思いやり
情動の制御
自尊心・楽観性・自信
より具体的にいうと、自ら主体的に物事に取り組む、自分の気持ちをコントロールする、他者とコミュニケーションが取れる、自分に自信を持つ、などのことです。
乳幼児期にこうした能力を育むことで、成長後の精神的な健全さや社会性を高める資質となると考えられているのです。
では、こうした非認知能力を育むためには、どうしたらよいか
必要なのはたった2つだけです。
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非認知能力を育む2つの大切なこと
非認知能力を育むには、特別なことは必要ありません。むしろ親子なら普段、自然に実践していることの中にあります。
大人とのかかわり
ひとつは、大人とのかかわりです。親や家族など、周囲の大人が子どもの心に寄り添い、子どもは大人から無条件に愛されているという経験を、精神医学や心理学の分野では「アタッチメント」といいます。
このアタッチメントを乳児期から経験することで、大人への信頼感が確立して、自分の気持ちをコントロールできるようになり、自発的に物事に取り組む基盤が形成されるのです。
あそび
もうひとつは、「あそび」です。
実は、子どものあそびには、「どうすると面白いか」「なぜそうなっているのか」「何が必要か」「成功したら嬉しい」「どうしたらもっと上手くいく?」などなど、〈問い〉や〈探求心〉、〈知るよろこび〉、〈問題解決への工夫〉があふれています。
これらは、就学期以降、学校での学習で必要とされているものばかりです。つまり幼児期のあそびはヒトの知的好奇心の発現であり、この時期に思いっきり遊び込むことが後の人生で大きな意味を持つということなのです。
まとめ
乳幼児期に、親や周囲の大人とかかわりあいながら、思いきっりあそぶことが「非認知能力」を大きく伸ばすことにつながるのです。
「かかわり」も「あそび」も、それ自体は何も目新しいものではありません。しかし、具体的にどうすると良いのか、と考えると、パッと思いつかない方も多いのではないでしょうか
どういう「かかわり」やどんな「あそび」が力を育むのでしょうか? 大人は何をしてあげればよいのでしょうか?
非認知能力を育てる行動とは
まずは「そこにいる」ことが大切
たとえば、あなたが帰宅後、さっそくビールの缶をぷしゅっとやって、ごろんと寝転んでテレビを見ているとします。
そこへ、子どもがやってきて、あなたの体に登りはじめました。ようやくほっと一息ついたところのあなたは、「あそんで~」とせがまれたら断りづらくて、若干疎ましく感じるかもしせん。
しかし、子どもは、好きな大人が近くにいて、声や息遣いが聞こえ、お馴染みの匂いがする、それだけでも十分満ち足りています。あなたは、ただ寝転んでいるだけでも構いません。それが、子どもにとっては、満ち足りた有意義な時間なのです。
楽しませること、サービスすることが大事なのではありません。あなたの存在そのものから、子どもは安心感や自己肯定感を得るのです。肩ひじ張る必要はまったくないのです。
素晴らしい「楽しい」発見・開発能力
喜ばせることが目的でないという意味では、おもちゃも同様のことが言えます。子どもには本来、そこにあるものを何かに見立てて自分なりの活用をしようとする“能力”があります。
大人の使っている鞄を持ち出してお出かけごっこをするなど、空き箱や古新聞などの廃材、洗濯バサミやストローなどの日用品、ドングリや石などの自然物から、自分なりに遊び方を工夫します。
そして大切なのは、こうした“おもちゃでないおもちゃ”は、その時の子どもの工夫によって、何にでもなるという点です。
空き箱が、時には楽器、時にはかばん、そしてまたある時にはスマホ…… 『非認知能力を育てるあそびのレシピ』より(イラスト:島内泰弘)
買い与えられた高価なおもちゃよりも、自分で見つけてきたり、大好きな大人も使っている“あれ”を工夫したりして、使いこんでいくほうが、彼ら彼女らにとって大きな刺激となるのです。
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見えない能力の成長が見える瞬間を大切に
手先が器用になると、実際に工作をして、より本格的なおもちゃを自分で作ろうとするでしょう。
その作業や出来栄えの変化を見ていれば、彼らの想像力や探究心、手先の使い方などの運動能力の成長を実感できるはずです。目には見えませんが、これこそ「非認知能力」が育まれている何よりの証拠です。
道具が使えるようになったら工作コーナーがあると楽しい。DIYに自信のあるパパは、カーペットを敷いて工作台をしつらえるのも楽しそう!
いろいろなあそびは、ヒトの内面を豊かにするレシピです。レパートリーが多ければ多いほど、人生というテーブルの上は豊かにうるおいます。それを幸せと言っても良いかもしれません。
「学び」へ向かい、「知」を引き出す
非認知能力が育まれたことによって、天才児になり、難関校に進学して、成人後は経済的成功を得られる、とお考えなら、非認知能力によってそうした将来が約束されるものではありません。
というと、身も蓋もありませんが、こうしたらこうなる、と単純に図式化できないところが人生の奥深さでもあります。
ただし、こういうことは言えます。
あそびによって充実した「今」の積み重ねが、実りある幼児期を作り、次のステップに向かうパワーの源になる、このことは研究結果からも明らかです。次のステップとは、そう、就学期、学校に上がったときです。
暗記や知識の集積による学習には限界がありますが、それとは別に、自ら問いを発したり、探究しようとする心は無限大です。こうした「なぜ」「知りたい」という欲求を「学びに向かう力」と言い、就学後の学習に対する姿勢に大きく影響することが指摘されています。
この学びに向かう力は、非認知能力の延長線上にあるもの、と考えられているのです。「なぜ」「知りたい」という欲求は、あそびを通して育まれているからです。非認知能力を育むことは、“知”という認知能力を引き出すことにつながっているのです。
何はともあれ、まずは難しく考えずに、幼児期に思いっきり遊び込むことが、人生全般にわたって良い影響を与える、そういう理解でいればよいのです。 あれもおいしい、これも大好き、また食べたいな、という豊かな食生活が、健やかな体を育みます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は非認知能力についてお伝えしました。
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